テコにちは(こんにちはのあいさつです!)、管理人テコです。
建築模型、住宅模型を副業で紹介する番組にはもうウンザリしています。他の副業に対して知識もスキルも想像以上に必要(大事なのはココじゃないけど)なのに。しかも・・・と嘆いています。「お茶の間に別の視点で伝えられないのかねぇ」と、お昼のメディアの限界説を唱えたくなるほどテレビは観ないテコです。で、自分ならどんなお昼の特集にする?と思ったので考えてみました。
模型を時系列で分類
専門学校の学生さんへのワークショップやデザインに力を入れている高校の特別授業にお邪魔することがあります。その時に紹介する資料の一部をご紹介します。
模型は分かりやすく5つに分類することができます。
- 企画模型:クライアントさんに提案する
- 検討模型:間取りや外観などを検討する
- 完成模型:竣工前に最終確認する
- 展示模型:不特定多数の方に公開する
- 記念模型:思い出を残す
それぞれに用途が異なり、色が付いたり外構(敷地)も表現したり様々です。
時代と共に人気度が変わる
統計があるわけではないのですが、5種類の模型は時代によって人気不人気がはっきりします。例えば、企画模型は都市計画がピークの時代にはバンバン作られ、やってくる未来をワクワクさせました。豪邸のような住宅展示場のモデルハウスの住宅模型、あるいは建設前からPRするためのマンションギャラリーの特大マンション模型が大盛況だった時代には、完成模型で優雅な暮らしを想像してもらい購入を促していたものです。
古き良き時代を残す
そんな華々しい時代もだいぶ前のことのよう。若い世代はその頃の大きな模型に接することは限りなく少なくなってしまいました。取って代わって人気に火が付きそうな分野が「思い出模型」です。以前からあるものとしては鉄道模型などで良く見かける昭和チックな建物や、ジブリ映画などの中に登場する趣深い建物の再現模型、あるいは取り壊しが決まった有名建築を模型にして残すプロジェクトなどがあります。それらと並行して、我が家の思い出を模型にして残したり、震災で失った地域を風化させないためにも模型で残すといった活動も存在します。
上の写真は2022年10月16日まで東京都品川区WHAT MUSEUM「建築模型展ー文化と思考の変遷ー」で見学ことができます。写真もOKな模型がいくつかあります。
思い出模型がじわじわと
「記憶に残す」というコンセプトのもと作られた模型はこのようにたくさん存在します。そして、2022年の今、想い出の我が家、おじいちゃんおばあちゃんの家を立体で残したい「思い出模型」がじわじわと注目され始めています。単にそうしたい人が以前からいるだけでなく、時代がそうさせていると感じることが多々あり、例えば、
- 新築の完成模型より取り壊される実家を模型にして欲しい
- 作業中を見せてもらうことで懐かしかったあの頃がより鮮明によみがえる
- 図面もないし忠実でなくてもいいから昔の実家を再現してもらいたい
というように、新しいモノへの満足よりも古いモノへの想いに重きを置く傾向が強くなってきたんです。
”モノ”がない厳しい時代を生きた人たち、”モノ”があふれて不自由のない時代に生きた人たち、”モノ”から”コト”へと関心が移り始めた時代に生きる私たち。今まさに、”コト”への関心が思い出模型という形で表れているんじゃないかなと思います。
ライブ配信という価値
完成したモノだけに価値がある時代はもう終わっています。ではどんな時代かというと、完成するまでの過程にこそ価値があるとする時代です。
例えば、ある仕事仲間から思い出模型の紹介を頂いたことがありました。クライアントさんは「祖父祖母の解体される家と庭を模型にして欲しい」ということで作ってくれる先を探していたのだそうです。
当時、Youtubeや00:00STUDIOで作業配信をしていたので、とっさに「作っているところも観ますか?」とクライアントさんに問い合わせたところ、公開もOKということで実現したライブ配信でした。
この配信がtecoにとってもとても貴重な体験で、今でも公開可能な案件は製作作業をライブ配信しています。そんな感じで、すでに漫画家さんや映像クリエイターさんなど、そもそも完成品しか評価の対象にならなかった分野の方々の作業過程が価値を持ち始めています。
- そもそもの作業過程の複雑さ
- 完成までに要する時間
- コンセプトや考え方の深堀り
- チャットによる会話の楽しさ
- 感動や懐かしさの共有
そういったものに価値を感じる視聴者が差し入れ(投げ銭)や制作依頼をその場でできるなどの充実した交流が受け入れられているんですね。そんな観点から、思い出模型の需要は今後伸び、かつ、製作過程も共有するような時代がやってくるかもしれません。
暇つぶし美学
話は変わって、昔から屋根裏部屋や小さな書斎を秘密基地のように扱う節が私たち男性の中にはありました。これ、もちろん趣味の世界なんですが、言い方を変えると暇つぶしなんです。空いた余暇をどう過ごすかの究極だと思うんです。そんな究極の過ごし方には他人は関与しないのが当たり前でもあったはずです。せいぜい関与があっても趣味仲間くらいで。
ところが、現代の究極の過ごし方は変化を遂げていて、その最たるものがYoutubeチャンネルによる収益化や副業解禁が広まりつつある企業の在り方からも伺えます。要するに、究極の過ごし方は人に影響も与える暇つぶし美学(ニッチな研究成果を披露し社会をも動かす?!)にまで発展しているようにも思えるんです。
建築模型で言えばプロの模型職人が作る模型ではなく、趣味で始めた模型マニアによる模型製作が価値共有(ライブ配信)によって投げ銭や寄付・支援といった共感を得ているということになります。
さいごに
tecoは今、プロの建築模型職人としてやっていますけど、究極の働き方はプロとしてではなくマニアとしてなんじゃないかって最近思っているんです。プロがアマに負ける時代がやってきちゃうんじゃないかって。それはプロの意識がとかアマのマニア度がというより、社会の成熟度が大きく関係していて、世界はすでにその域に突入していると感じています。そこを深堀りできない日本って・・・。
日本のメディアはどうなるかな?やっぱりYoutubeにも勝てないままかな?TVの画面を16分割してマニアの作業配信ライブなんてしたらどんな反響があるのかな?(テレビの威力はまだまだあって興味深いと思うtecoです)